片頭痛は「発作の合間」にも続いている——間欠期症状をご存じですか
「ズキズキする頭痛はおさまった。でも、なんとなく頭が重い、光がまぶしい、疲れやすい、次の発作が怖い」。頭痛が出ていない日にも、こうした不調を抱えている片頭痛の方は少なくありません。これは気のせいでも体質のせいでもなく、近年「間欠期負担」として注目されている、片頭痛の重要な一面です。
そもそも「間欠期」とは?
片頭痛は、頭痛が起きている「発作期」と、頭痛がおさまっている「間欠期(発作間欠期)」を繰り返す病気です。間欠期とは、文字どおり発作と発作の合間、頭痛が出ていない期間のことを指します。
これまでの頭痛診療は、「いかに発作を抑えるか」「ひと月に何日頭痛があったか」に重点が置かれてきました。裏を返せば、頭痛がない間欠期は“問題のない時間”と見なされがちでした。しかし実際には、頭痛がない時期にも体や心に負担が残り続けていることがわかってきています。
頭痛がない日も続く「間欠期負担(IIB)」という考え方
片頭痛は、単に「ときどき強い頭痛が出る病気」ではありません。発作が落ち着いたあとも、光や音への敏感さ、だるさ、頭の働きにくさといった症状が、程度を弱めながら間欠期にも残ることが報告されています。こうした頭痛のない期間に生じる症状や生活への支障を、医学的には間欠期負担(Interictal Burden:IIB)と呼びます。
間欠期負担は、「発作のときだけつらい」という従来のイメージでは見落とされがちです。けれども、本人にとっては日々の生活の質(QOL)を静かに、しかし確実に削っていく要素になり得ます。
こんな症状はありませんか?——代表的な間欠期症状
間欠期にあらわれやすい症状には、次のようなものがあります。発作のときほど強くなくても、毎日の積み重ねとして生活に影響します。
- 光がまぶしい(光過敏):間欠期にもっとも多く、つらさも大きい症状とされます。晴れた屋外やパソコン画面がつらい、サングラスが手放せない、など。
- 疲れやすさ・だるさ:はっきりした理由がないのに疲労感が抜けない。
- 皮膚がピリピリする・触れると痛い(アロディニア):髪をとかす、メガネや帽子が当たるなど、本来痛くない刺激を不快に感じる。
- めまい・ふらつき:乗り物酔いしやすい、頭を動かすとフワッとする。
- においに敏感(におい過敏)/音に敏感(音過敏):特定のにおいや雑音が普段以上に気になる。
- 頭がぼんやりする・集中できない:いわゆる「ブレインフォグ」。言葉が出にくい、考えがまとまりにくい。
- 次の発作への不安(予期不安):「いつまた頭痛が来るかわからない」という不安から、予定や約束を立てづらくなる。
- 気分の落ち込み・寝つきの悪さ:抑うつや不眠を伴うことがあります。
「予定が立てられない」つらさ
間欠期負担の特徴のひとつが、発作の予測がつかないことによる生活の制限です。旅行や仕事の約束、子どもの行事を「また頭痛が出たらどうしよう」とためらってしまう——この“見えない我慢”そのものが、片頭痛がもたらす負担の一部です。
なぜ頭痛がない時にも症状が出るのか
片頭痛のある脳は、間欠期にも刺激に対して敏感な状態(過敏性)が残りやすいと考えられています。光・音・においといった刺激を処理する脳の働きや、感情・自律神経に関わる領域(視床下部や大脳辺縁系など)が関与しているとされ、これがストレスや不安と結びついて、間欠期の不調や予期不安を生み出すと説明されています。
つまり間欠期症状は、「気の持ちよう」ではなく、片頭痛という病気の延長線上にある反応だと理解することが大切です。
発作の回数が少なくても、負担が重いことがあります
ここはとても重要な点です。「頭痛は月に数回だから、自分は軽いほう」と考えている方は多いのですが、発作の日数と間欠期の負担は、必ずしも一致しません。
日本人の片頭痛患者さんを対象とした研究では、間欠期負担の大きさは、発作時の生活への支障度(HIT-6)や罹病期間(片頭痛とのつき合いの長さ)と関連する一方で、1か月あたりの頭痛日数とは必ずしも相関しなかったと報告されています。発作の頻度だけを見ていると、本当のつらさを見落としてしまう可能性があるのです。
だからこそ私は、外来で「頭痛のない日もすっきりしていますか?」と必ずお尋ねするようにしています。
セルフチェック:あなたの「間欠期負担」はどのくらい?
間欠期負担を簡単に把握する指標として、MIBS-4という4つの質問からなるスケールが知られています。過去4週間の「頭痛がなかった日」を思い出して、それぞれどのくらい当てはまるか確認してみましょう。
間欠期負担チェック(MIBS-4をもとに作成)
過去4週間、頭痛がなかった日について、次の4項目はどのくらい当てはまりましたか。
| No. | 頭痛のない日でも… |
|---|---|
| 1 | 仕事や学業に支障があった |
| 2 | 家庭生活や人づき合い・社会生活が損なわれた |
| 3 | 予定や約束を立てるのが難しかった |
| 4 | 気分の落ち込みや集中しづらさなど、心・頭の働きのつらさがあった |
| 合計点 | 間欠期負担のめやす |
|---|---|
| 0点 | 負担なし |
| 1〜2点 | 軽度 |
| 3〜4点 | 中等度 |
| 5点以上 | 重度(一度ご相談をおすすめします) |
※これは自己評価の目安であり、診断ではありません。点数が高い方や、生活に支障を感じる方は受診をご検討ください。
放置せず、相談していただきたい理由
間欠期負担を抱えたままにしていると、生活や仕事の制限が続くだけでなく、うつや不安を合併しやすくなることが知られています。とくに間欠期にも光がまぶしいと感じる方は、抑うつ・不安傾向が高いという報告もあります。また、頭痛とのつき合いが長くなるほど負担が積み重なりやすいことから、「慣れて我慢する」より「早めに整える」ほうが望ましいと考えています。
当院での頭痛診療の考え方
当院では、発作のときの痛みだけでなく、間欠期も含めた“あなたの毎日全体”を診ることを大切にしています。具体的には、おおよそ次のような流れで進めます。
- 正確な診断から:まずは問診を丁寧に行い、必要に応じてMRI・CTで、危険な二次性頭痛が隠れていないかを確認します。当院では即日の画像検査に対応しています。
- 急性期治療の最適化:発作が起きたときに、より早く・確実に対処できるよう、お薬の使い方を一緒に見直します(飲みすぎによる薬剤の使用過多にも注意します)。
- 予防治療の検討:発作の頻度や間欠期の負担が大きい場合は、発作そのものを減らす予防治療をご提案します。内服の予防薬のほか、CGRP関連製剤などの選択肢も含め、一人ひとりの状態とご希望に合わせて検討します。
- 生活面・心理面のサポート:睡眠・ストレス・誘因への対処、必要に応じて漢方の活用や、気分・不安への配慮も行います。
大切なのは、治療の選択は画一的ではなく、お一人おひとりに合わせて決めていくということです。間欠期のつらさを言葉にしていただくことが、より良い治療につながります。
こんなときは受診を
- 頭痛がない日も、まぶしさ・だるさ・頭の働きにくさが続く
- 「また頭痛が来るかも」と不安で、予定を入れづらい
- 市販薬を月に10日以上使っている/効きが悪くなってきた
- 頭痛のために仕事・家事・学業を休む、あるいは質が落ちていると感じる
ひとつでも当てはまる方は、どうぞお気軽にご相談ください。「この程度で受診していいのかな」とためらう必要はありません。
よくあるご質問
頭痛がない日も体調が優れないのは、片頭痛のせいですか?
発作が月に数回でも、治療したほうがよいですか?
間欠期の症状は、治療で軽くなりますか?
市販の鎮痛薬でしのいでいますが、問題ありますか?
頭痛のない日も、すっきりしていますか?
横浜・井土ヶ谷駅すぐ。片頭痛の「間欠期」も含めてご相談いただけます。
井土ヶ谷脳神経外科・内科 頭痛・めまい・しびれクリニック
主な参考文献
- Nahas SJ, et al. The not so hidden impact of interictal burden in migraine: A narrative review. Front Neurol. 2022.
- Buse DC, Lipton RB, et al. Migraine Interictal Burden Scale (MIBS-4) に関する一連の研究.
- Llop SM, et al. Increased prevalence of depression and anxiety in patients with migraine and interictal photophobia. J Headache Pain. 2016.
- 日本人片頭痛患者における MIBS-4 の臨床的有用性に関する研究(脳神経外科外来での横断研究, 2025).
- MSDマニュアル プロフェッショナル版/家庭版「片頭痛」.


